原爆被爆者における加齢に関連した生体指標の上昇と放射線被曝の影響

約70年経過した今日においても、原爆放射線被曝は生存者の健康に長期的な影響を及ぼし続けており、被曝線量の増加に伴って炎症性関連疾患のリスクを上昇させている。事故や治療で高線量の放射線に被曝した患者に被曝後数日間急性の炎症反応が起こることが報告されているが、炎症に対する放射線の長期的後影響についてはほとんど明らかにされていない。
我々は1945年に広島と長崎で原爆を経験した原爆被爆生存者について非常に長期にわたる研究を行ってきた。2つの主要なコホート研究として、寿命調査研究(LSS)と成人健康調査研究(AHS)を行ってきた。AHSはLSSから選ばれた部分集団を対象とした2年に1度の健康診断に基づく追跡調査研究である。本セッションでは、そのAHSから無作為に選ばれた広島の原爆被爆者を対象として炎症関連生体指標と原爆放射線被曝線量との関係についてこれまでに報告した論文を中心に紹介する。

 

Profile: 林奉権

(公財)放射線影響研究所放射線生物学/分子疫学部副部長
1980年長崎大学薬学部薬学科卒業、1982年同大学大学院薬学研究科修士過程修了、1982年から1990年湧永製薬生命工学研究所で研究を行いながら、1985年から1989年広島大学医学部総合薬学科で研究、1989年広島大学薬学博士号修得。1990年に放射線影響研究所(放影研)放射線生物学/分子疫学部(放生/分子疫学部)免疫学研究室研究員となり、1993年から1995年米国ミシガン州立大学 小児/人間発生学部に留学、2003年から放影研放生/分子疫学部免疫学研究室主任研究員、2005年から免疫学研究室長、2009年から現在まで現職。この間の2005年から広島大学大学院医歯薬保健学研究科客員准教授、2008年から同研究科客員教授となり現在に至る。主な研究分野は免疫学、細胞生物学、細胞間コミュニケーションおよび分子疫学で、ヒトに及ぼす放射線被曝の影響について、特に、70年前に原子爆弾により放射線被曝した広島、長崎の原爆被爆生存者のがんおよびがん以外の疾患の発生機構について研究を行っている。